あらすじ
「鐘一つまともに鳴らせぬ偽聖女め!」
公爵令嬢セシリア・ローデンは、王太子ジークによって婚約破棄され、聖女候補の資格も爵位も剥奪されて辺境の廃村へと追放された。
だが、誰も知らない。大聖堂の『聖鐘』はとうに割れ、義妹ミレーユが披露していた「神々しい鐘の音」は光魔法が生み出した偽物にすぎないことを。本物の鐘を鳴らせば結界が暴走する——だからセシリアは、あえて鳴らさなかったのだ。
(せいぜい、頑張ってちょうだいね。偽物の鐘で、この国を守れるものならね)
前世の記憶を持つ彼女には、ある特別な才能があった。それは“鐘を鳴らす”こと。たどり着いた石畳の村・エルディナには、三年前から沈黙した鐘楼がそびえていた。魔物に脅かされ寂れゆく村。だが、この鐘は——割れていない。
「直しましょう。どうせ、他にすることもありませんし」
袖をまくったセシリアの静かな再生が、いま始まる。無邪気な少年トト、村人たち、そして頼れる相棒との出会いが、彼女に本当の居場所を与えていく。
村に澄んだ鐘の音が響き渡るとき、彼女を追放した王都は、その音の意味に気づけるのか——気づいても、もう遅い。
沈黙する鐘があるなら、私が鳴らす。それが前世から受け継いだ、たった一つの誇りだから。
追放された“鐘守”が織りなす、痛快で心温まる再生物語、開幕!