あらすじ
「三十秒後に、水が来る」
警報が鳴るより先に、最低評価Fの《マッピング》使い・天野陸は地下通路の浸水を告げた。
彼に見えるのは未来ではない。
床のわずかな傾斜。いつもと違う魔物の動き。壁に残る古い水位跡。
ばらばらの「今」を地図へ重ね、危険の形を読む。
四年前、ダンジョン調査から帰らなくなった父の《測線》に憧れていた陸にとって、《マッピング》のF評価は残酷だった。
戦えない。未知の場所は見えない。市販の地図端末でも代用できる。
それでも、地形は嘘をつかない。
A評価の雷を持ちながら、人を傷つけることを恐れる神崎ミオ。
起きた事実を時刻ごと残す《ログ保存》の七瀬ハルカ。
圧倒的な破壊力を期待され続ける黒崎玲音。
陸は仲間と学生探索チーム「帰還地図」を結成する。
目指すのは最速攻略でも、最多討伐でもない。
危険を読み、退路を残し、全員を帰すこと。
やがて青羽市の地下で、人間に忘れられた川が目を覚ます。
そして陸は知る。
地図に入れなければならないのは仲間だけではない。
自分自身もまた、「帰すべき一人」なのだと。
――攻略とは、最深部に着くことではなく、全員で帰ってくること。