あらすじ
死にたいわけじゃない。
けれど、生きたいとも思えない。
二十八歳の会社員・莉奈(リナ)は、仕事をして、家に帰って、眠り、また会社へ向かう──そんな変わり映えのない毎日を繰り返していた。
大きな不幸があるわけでも、生活に困っているわけでもない。
それでも、自分が何のために生きているのか分からなかった。
そんなある金曜日の帰り道、莉奈は路地裏で奇妙な三人組と出会う。
妖艶な女・賽黎(サイリ)、飄々とした男・游牙(ユウガ)、生真面目な男・柊(シュウ)。
莉奈を見た彼らは、驚いたように問いかけた。
「君……俺たちが見えるの?」
その出会いをきっかけに、莉奈は本来、生きた人間が立ち入ることのない「冥界」へ足を踏み入れる。
様々な死者たちと出会い、彼らの選択を見届けるうちに、莉奈は少しずつ自分自身の人生とも向き合っていく。
これは、生きる理由を持たなかった一人の女が、冥界を巡りながら、自分の行き先を探す物語。
灰色のように曖昧な場所に立つ莉奈の、生と死の狭間の猶予期間が今、幕を開ける。