あらすじ
全戸退去済み。住民から返却された鍵も、二本とも揃っている。
それなのに、市営団地の406号室には、誰かが暮らした痕跡が増えていく。
濡れた流し。減っていく米。残る温度。
解体を控えた団地の引渡し担当・岸本志穂は、鍵、封印、足跡、入退棟記録を調べ始める。だが、残された痕跡は「ひとりの侵入者」では説明できなかった。
予定どおり部屋を閉じるのか。
それとも、記録の外にいる誰かを先に見つけるのか。
引渡しの期限が迫るなか、志穂は「空室」の意味を問い直していく。
制度上は空室になった場所から、人の生活はいつ退去するのか。
一室に残された生活の痕跡を追う、現代ミステリー。