あらすじ

毎晩11時、玄関から「ただいま」と声がする。 3回返事をしたら、終わり。 東京の会社を辞めて地元近くの町に戻ってきた春川千尋、24歳。 実家には帰れず、見つけたのは家賃2万8千円――相場の半額のアパート「コーポ白萩」204号室だった。 入居した夜、下駄箱の扉の裏に、黄ばんだ貼り紙を見つける。 『夜11時に玄関から声がしても、返事はしないでください。』 その下には、擦れて読めない、もう1行。 11時ちょうど。かけたはずの鍵が回り、ドアが開く。 そして、若い男の声がした。 「――ただいま」 返事をしてはいけない。分かっているのに、その声はあまりにも優しかった。 疲れ果てたある夜、千尋は寝ぼけて、つい返事をしてしまう。 翌朝、玄関には見知らぬ男物のスリッパが揃えて置かれていた。 増えていく2本目の歯ブラシ。「よ」と彫られた古い箸。冷蔵庫の麦茶。柱にかかった、昭和61年のカレンダー。 部屋は少しずつ、「誰かが帰ってくる家」に変わっていく。 隣に住む老人は言った。 「前の人は、3回目の返事をして、この部屋で死んだ」 40年間、毎晩帰ってくる彼は、いったい誰を待っているのか。 そして千尋は、3回目の「おかえり」を言わずにいられるのか。 帰る場所を失った死者と、帰る場所から逃げてきた生者。 怖くて、切ない、ひと夏の事故物件ホラー。 ※全10話・完結まで毎日更新します。 ※他サイトでも同時連載しています。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/09/26
  • 現在の作品ただいまを返してはいけない部屋