あらすじ

一九九〇年、バブルの崩れかけた東京。外資系証券に「機械の人」として入った楠透は、名の知れた営業に面白がられ、不動産で財を成した「会長」と、その背後に黙って座る男たちの夜に連れ出される。ホテルのすき焼き屋、銀座のクラブ、香港から来た客の指の、緑の石。会長に渡された白い封筒を、楠は開けないまま引き出しにしまった。 五年後、香港のホテルで一人の営業が死ぬ。新聞には出なかった。 誰にも奢られず、何も消さずにノートに書き続ける規律を抱えて、楠はロンドンへ、ニューヨークへと渡る。人の声で売られていた株は、やがて百万分の一秒を奪い合う機械のものになった。かつてすき焼き屋で出会った少年と再会した楠は、善意から、ある発想を彼に手渡してしまう。 二〇一三年、東京。売買審査の画面に、地中海の小さな島から届く注文が並ぶ。その取り消しの間隔に、楠は、自分がかつて書いた数字を見つける。 書けば、誰かの人生が止まる。書かなければ、何が起きたか分からなくなる。 港で育った一人の技術者が、二十三年分の記録を抱えて、最後に選んだことは何だったのか。東京・ロンドン・ニューヨーク・キプロスを舞台に描く静かな国際金融小説。

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小説を読もう2026/09/26
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