あらすじ
明治十一年。
黒船の煙を産湯に育った二十歳の伊藤鶴吉は、英語は完璧、プライドはエベレスト級の天才インタープリター(通訳者)だ。
楽に稼ごうと目論む彼の前に現れたのは、英国から来た小柄な貴婦人イザベラ・バード。
上品な皮を被った「好奇心のバケモノ」である彼女は、持病の療養(自称)のため、西洋人が誰も通ったことのない東北の泥道、果ては蝦夷地のアイヌの集落を目指すという。
「一日で泣いて逃げ出す地獄です」と突き放し、追い払うために当時の公務員の初任給を遥かに超える【月給十二ドル】をふっかけた鶴吉だったが、逆にその傲慢な自信を気に入られ、不本意ながらも地獄のサバイバル旅へと連行されることに……。二十六歳差の生意気な天才通訳と爆走英国レディ。近代日本の「奥地」をゆく、実在の一次資料に基づいた、一歩先も読めない明治マキシマム珍道中が、はじまる。