あらすじ
十年間、特殊部隊に所属していた男が、ただ一つ望んでいたもの。
それは、平穏な暮らしだった。
銃声もない。
命令もない。
戦場もない。
だから軍を退役した彼は、貯金をすべて使って小さなカフェを開いた。
今の彼にとって最大の悩みは、カプチーノの泡を完璧に仕上げることくらいだった。
――しかし、ある朝。
彼のカフェに、突然ポータルが現れた。
そこから現れたのは、異世界の兵士たち。
彼らは店の窓を吹き飛ばし、エスプレッソマシンを壊し、そのうえ大切なカプチーノまで台無しにした。
そして、兵士たちが同じポータルから帰ろうとしたとき、彼は後を追うことを決めた。
英雄になりたいからではない。
ただ、弁償してもらいたかっただけだ。
だが、ポータルを抜けた先で彼が知ったのは、兵士たちもまた、自分たちの意思で彼の世界に来たわけではないという事実だった。
ポータルが誤作動し、彼らは本来の目的地とはまったく違う場所へ飛ばされていたのだ。
そして彼自身も、何年にもわたる戦争によって荒廃した異世界に取り残されてしまう。
金もない。
知り合いもいない。
帰る方法も分からない。
生き延びるしかなかった。
それでも元のカフェへ戻る方法を探す中で、彼は戦争によって人生を奪われた人々と出会っていく。
かつて自分が置き去りにした戦場と、同じ光景を目にしながら。
そして彼は、どんな敵よりも難しい問題に直面する。
戦う方法なら、誰よりも知っている。
だが――
平和に生きる方法を、彼は知らなかった。
もしかすると、あのカフェはただ「帰りたい場所」ではないのかもしれない。
いつかそこは、敵同士だった者たちが、互いに殺し合うことなく同じテーブルにつける場所になるのかもしれない。