あらすじ
孤児院育ちのアッシュにとって、ハンスはたった一人の家族だった。
十八歳になり軍へ送られた二人は、斥候として戦争へ放り込まれる。
そこでアッシュが召喚したのは、一匹の黒い蜂だった。
やがて蜂は、美しい女の姿へ変わる。
「選びなさい、坊や。その子を離すか、わたしを選ぶか」
彼女の名はマイトレーヤ。
千年前、ひとつの国を守ったと伝えられる存在だった。
アッシュが望めば敵を殺し、軍を滅ぼし、国すらひれ伏させるほどの力を持つ彼女は、ただ一つだけを求める。
アッシュの命令だ。
大切な人を守るためなら、その力を使えばいい。
そう思っていた。
だが「守るため」という理由で誰かの生き方を決めることは、本当に守ることなのか。
命令に従うことと、自分で選ぶことは同じなのか。
戦場で出会う兵士。
国に命を使われる聖女。
神に仕える者。
王として生きることを求められた少年。
そして、千年前から「守ること」だけを命じられてきたマイトレーヤ。
戦争が終わっても、アッシュの旅は終わらない。
国を追われ、海の向こうの無人大陸へ渡った彼は、そこで今度こそ自分の生き方を探そうとする。
そんな彼の前に現れたのは、森で一人きりになっていた謎の少女カティア。
彼女もまた、誰かに利用され、誰かを利用することでしか生き方を知らない少女だった。
守る者。守られる者。命じる者。従う者。
誰かに与えられた役目ではなく、
自分で次の生き方を選ぶための物語。