あらすじ
辺境の小さな村・エイルに生まれたロイ・ハーヴェストは、剣も体術も人並み以下。狩りも力仕事も苦手で、周囲からは「頭でっかちで使えない奴」と見なされていた。
だが彼には、誰も知らない得意分野があった。
幼い頃の病弱な日々、亡くなった祖父が遺した書物と記録簿を読み込んで育った彼は、状況を読み解き、記録を分析し、落としどころを見出す力に長けていた。剣で語れないなら、帳面で語ればいい。ロイはそうやって、村の揉め事をひとつ、またひとつと解決していく。
そんなある日、祖父の遺した帳面の片隅に、聞いたことのない地名を見つける。
――灰の谷。
その走り書きが、やがて500年前の建国史に眠る禁忌の記録へと繋がっていくとは、まだ誰も知らない。
村を出たロイは、追放された元自警団の男、実家を軽んじられてきた商家の娘、そして敵として立ちはだかったはずの参謀と出会い、少しずつ「一人では手に負えない問題」に向き合っていく。
村から町へ、町から都市へ、都市から国家へ。
世界が広がるたびに、常識も、戦い方も変わっていく。
それでもロイのやり方は変わらない。
――圧倒的な力ではなく、積み上げた準備で。
これは、剣を持たない知略の民が、大陸の均衡を左右する存在になっていくまでの物語。