あらすじ
地下に迷宮が出現して十二年。安全管理と動線誘導を司る「ダンジョン管制士」は、都市の産業を支える要の専門職となっていた。
新宿第九ダンジョンの主任管制士・|瀬尾灯里《せおあかり》は、新設された観光客向けルート直下に隠蔽された未認可空洞と、手抜き工事による崩落の危険性を告発する。しかし、保身を図る会社上層部によって告発は握りつぶされ、灯里は理不尽にも即日解雇を言い渡されてしまう。
失意の中、私物を整理していた喫茶店で、午前零時ジャストに奇跡が起きる。
三年前に地下で殉職した姉の遺品である旧式救難送受信機が、突如として激しい警報を鳴らしたのだ。
受信したのは、あの新設ルートの床が崩壊し、公式地図に存在しない暗黒の「第零層」へと滑落したツアー客たちの切迫した悲鳴だった。
会社は事故を隠蔽するために通常回線を遮断。さらに連絡路の二次落石により、公的救助隊の進入には絶望的な時間を要する。
このままでは、負傷した遭難者たちが有毒な青苔の胞子に蝕まれ、命を落としてしまう。
「消された死地に、人が落ちた。――見捨てるわけにはいかない」
社員証を奪われた灯里は、国家資格である「一級ダンジョン管制士」の権能を行使し、単身で封鎖された地下要塞へと突入を決意する。
灯里の武器は、チタン打診棒と反響測量器を操り、音波の反射から暗闇の空間構造を脳内に立体視化する卓越した技能「反響測量」。
そして地上で後方支援を担う、毒舌だが腕利きの整備士・|相馬凛《そうまりん》との確かな連携だった。
だが、閉ざされた地下で灯里を待ち受けていたのは、過酷な物理環境だけではなかった。
遭難者たちの救難符号を狡猾に模倣して人間をおびき寄せる怪異「呼び真似」、そして最深部を覆う未知の異変――。
迫り来るタイムリミットの中、音で空間を視る元管制士は、絶望の底に取り残された遭難者たちのもとへ辿り着くことができるのか。
綿密な空間構造と論理的な判断で活路を拓く、緊迫の現代都市救難サスペンス。
※ https://kakuyomu.jp/works/2912051606905189513 の改稿版です