あらすじ
現代日本の外科医・倉科灯里は、執刀ミスの疑いをかけられ謹慎中の身。荒れた気持ちで見上げた夜空に流れた彗星に、「いっそ、小説みたいな綺麗な中華の国に行けたら」と投げやりな願いを口にした夜、目を覚ますとそこは見知らぬ後宮の一室だった。
灯里の意識が入ったのは、齢十六にして「生まれつき病弱で儚げ」と評判の側妃・明玉蘭。幼少期から美しく聡明で誰からも愛されているが、人前に出れば咳き込み倒れてしまう――というのが後宮内の共通認識である。だが実際のところ、蘭の"病弱"の九割は仮病であり、残る一割は誰も気づいていない持病だった。
現代医学の知識を持つ灯里は、蘭の体調を数日で立て直してしまえる。しかし正体を明かせば厄介事に巻き込まれるのは目に見えている。灯里は「病弱で世間知らずな姫」を演じ続けながら、こっそり後宮内で頻発する原因不明の"祟り"――乳幼児の相次ぐ体調急変――の正体を、薬学と生理学の知識で解き明かしていくことになる。
演技で無能を装う灯里と、彼女の異様な聡明さに気づき始める皇太子・冷徹夜。表向きは儚い姫、裏では毒と病を見抜く名医。二重生活の綻びから、後宮の派閥争いに巻き込まれていく——。