あらすじ
「母上……!」
「お義母様……!」
「パトリシアお婆様……!」
「パトリシアお婆様ぁ……!」
「ひいお婆ちゃまぁ……!」
愛する子どもや孫やひ孫たちに囲まれながら、今際の際を迎える私。
80年の私の人生、辛いこともたくさんあったけれど、こうして振り返ると、とても幸せだったわ。
――それも全ては、あの人がいたから。
「は、母上ぇ!」
「お義母様ぁ!」
「パトリシアお婆様ぁ!」
「パトリシアお婆様ぁ!」
「う、うわあああああん!!」
――私も今そちらに行きますね、あなた。
「パトリシア、今この時をもって、君との婚約を破棄する!」
「………………え?」
ふと気が付くと、私は華やかな夜会の会場に立っていた。
自分の足で真っ直ぐ立てたのなんて数年ぶりだったので、思わず全身が震える。
いったい何が起きたのかしら……?
それに目の前には、その昔私の婚約者だったランドルフ様が――。
「君は陰でコソコソ、ジェシーに陰湿な嫌がらせを繰り返していたそうだな!? ジェシーが涙ながらに告白してくれたよ! 君のような痴れ者は、この僕の婚約者には相応しくないッ!」
「うぅ……、ランドルフ様ぁ……」
ランドルフ様は、メソメソしている男爵令嬢のジェシーさんの肩を抱いた。
ああ、これ、私が若い頃に、婚約を破棄された時の光景だわ。
あらあら、随分懐かしいわね。
これって、今際の際に見ている夢なのかしら?
でも、その割にはあまりにもリアルね?