あらすじ
アリシア・レインフォートには、婚約して半年になる王太子ローゼンについて、ずっと気になっていることがあった。
彼が、一度も笑わないことだ。
冷酷で、人を愛したことがなく、いずれ暴君になるのではないか。そんな噂まで囁かれるローゼンだが、実際の彼はアリシアの好きな菓子を覚え、寒い日にはショールを用意し、何気なく話した本まで読んでくれる。
そんな彼が笑ったら、どんな顔をするのだろう。ただそれが気になって、アリシアはローゼンを笑わせようと決意する。
ところが当のローゼンは、最近自分の顔ばかり見てくるアリシアを見て、とんでもない勘違いをしていた。
「もし、僕のことが嫌だったら婚約破棄してほしい」
嫌いだから見ていたわけではない。むしろ、その反対だった。アリシアはただ、笑わない婚約者の笑顔を見てみたかっただけなのだ。
面白い話をしても、美味しい菓子を用意しても、ローゼンはなかなか笑ってくれない。
そして手段に困り果てたアリシアは、とうとう――。