あらすじ
東京・大塚で働く三十歳の村上佐助は、変わり映えのしない毎日を送っていた。
仕事を終え、電車に乗り、家に帰る。
翌朝になれば、また同じ一日が始まる。
そんな彼の生活を変えたのは、「REM-B」と呼ばれる一台の古い装置だった。
眠っている人間の夢を記録する。
ただ、それだけのはずだった。
ところが佐助がREM-Bを使い始めると、夢の中の時間は現実とは違う速さで流れ始める。
数分の眠りが、夢の中では何時間にもなる。
そして実験を重ねるたび、その差は少しずつ大きくなっていった。
夢の中で過ごせる時間が増えることを、佐助は最初、悪いことだとは思わなかった。
現実では手に入らない時間。
もう一度見たい景色。
言えなかった言葉。
しかし、夢が長くなればなるほど、戻るための境界も遠ざかっていく。
やがて佐助は、自分が見ているものがただの夢ではない可能性に気づき始める。
そして彼のそばには、林美香がいた。
これは、夢を見るための物語ではない。
夢から戻るための物語だ。