あらすじ
「神楽《かぐら》くんって好きなものある?」
私がそう尋ねると、隣の席に座って窓の外を眺めていた神楽くんはゆっくりとこちらを向いた。
鼓動がひとつ大きく鳴る。彼の色素の薄い瞳がこちらを捉える瞬間に、私の心臓はまだ慣れていない。
「うーん、そうだなあ」
私の猛攻に神楽くんは腕を組んで考え込む。
今日も彼は美しい。すらりと自然に伸びた背筋。形のいい細面には高品質なパーツが配置され、きめ細やかな白い肌は幻のような儚さを帯びている。
そんな彼が先月うちのクラスに転校してきたとき、私は彼に一目惚れした。
「……強いて言えば」
「強いて言えば?」
少しの沈黙ののち、神楽くんは口を開く。
その答えを聞き逃すまいと私は全身の神経をすべて左耳に集約した。
「月的なサムシングかな」