あらすじ
高校二年生の春川栞には、放課後だけの秘密の仕事がある。人に言えない恋や謝罪を聞き、本人の言葉を一通の手紙に整える恋文の代筆だ。料金はパン一個や当番交代。人の恋なら百通でも書けるのに、自分の「好き」だけは一行も書けない。
ある日、校内で最も近寄りがたい生徒会長・一ノ瀬蓮が、栞の書いた七通の手紙を筆跡と句読点の癖から見抜く。告発の代わりに蓮が頼んだのは、好きな人への恋文だった。
「誰に?」
「好きな人」
「その人は誰?」
「最後まで書けたら教える」
他人の恋を言葉にするたび、二人の距離は近づいていく。蓮が書かせている手紙の宛名が、栞自身だと気づくまで。