あらすじ
プロローグ1
〜♪ 〜♪♪
僕は君 君は僕
光があるなら闇もある
闇があるなら光もある
バランスが保たれていないと 全て クズレル
〜♪ 〜♪♪
紅い月が笑う頃
楽しい宴を始めましょ。
狂った宴を始めましょ。
道化がいないなら 人間を
酒がないなら 天使の血を
女がいないなら 女神を
芸が面白くないのならば 捨て去ってしまえばいい
酒が美味くないのならば 全てを壊してしまえばいい
高潔な女神は その光を奪い去ってしまえばいい
踊れ 騒げ 歌え 狂え。
狂気に身を任せれば やがて 静かに
消エテユク…
〜♪ 〜♪♪
どこかで聞いた気がする。
聞いていないような気がする。
毎日のようにこんな夢を見ている気がする。
……夢?
本当にそうだろうか?
夢にしては現実味を帯びていて
現実にしてはもやもやした何かがある
曖昧模糊な世界。
歌声は頭の奥底で幾度も反芻され、狂気の旋律が骨の髄まで浸み込んでいく。血の匂いと、甘美で爛れた酒の香りが鼻腔をくすぐる。
気付いたらベッドの上。初めてあれは夢と悟る。
ひどく頭痛がした。
あの夢に映っていたのは……れ?
だけど、何か違った。
まるで鏡のように似ていたが、瞳の色、髪の色、性格……
全てが正反対だった。
……本当に……鏡のように……。
寒気がした。背筋に冷や汗が流れた。
ベッドの端に腰掛け、両手で激しく脈打つ頭を押さえる。幾ら記憶を手繰り寄せようとしても、あの一対の影——自分と同じ顔をした「何か」の異彩な姿だけが鮮明に脳裏へ焼き付いて離れない。
「光があるなら闇もある……」
口から漏れ出た声は、自分のものではないように掠れていた。
この世界は本当に平穏なのだろうか。それとも、自分が立っているこの場所自体が、崩れ去る直前の薄氷の上なのだろうか。
暗闇の底から、紅い月が見下ろしているような感覚が消えない。
まだ見ぬ惨劇の足音が、静かに、確実に近づいていた。