あらすじ
十六歳の少年フィンが使えるのは、小石を少し動かせる程度の弱い風魔法だけだった。
二年続いた凶作で家族は困窮し、フィンは家族を生かすため奴隷として売られる。
奴隷商人の馬車で運ばれていたある日、魔物の襲撃によって商人も護衛も死亡。
檻の中に一人取り残されたフィンは、手の届かない場所に落ちた鍵を見つめる。
檻を壊す力なんてない。
敵を吹き飛ばすこともできない。
それでもフィンは、小さな風を何度も起こした。
少しずつ。
少しずつ。
鍵を自分のもとへ引き寄せるために。
こうして自由を手に入れた少年は、狩人の町ローデンへたどり着く。
そこで出会ったのは、弓職人見習いの少女エルナと、一張りの弓だった。
風で敵を倒せないなら、矢を届かせればいい。
匂いを流し、煙を動かし、獲物の動きを読み、最後のほんの少しだけ矢を風で助ける。
風魔法は最後まで弱いまま。
強くなっていくのは、フィン自身だ。
奴隷だった少年が、弓と小さな風を武器に、一人前の狩人へと成長していく物語。