あらすじ
「準備は出来ているか」
そう聞かれて、私は「はい」と答えた。
――何ひとつ、出来てなどいなかったのに。
魔素を操る術者を育てる、山の国フェルゼン。
戦況が傾き、まだ未熟な教え子たちが、次々と前線へ送り出されていく。
名誉のために。
国を守る、誉れのために。
――それを教えた教官は、送り出した子の顔を、一つも覚えていない。
戦場に、栄誉などなかった。
あるのは、血と泥と、魔素に灼かれて死にゆく若者たち。
それを踏み越えて、剣が斬り合う。
これは、幻の名誉に送られ、忘れられていく者たちの物語。
月の照らす夜、魔物が群れて人を襲う、その世界の片隅で。