あらすじ
帝政暦527年11月25日。
帝国北東部の辺境都市クロイツに、一人の猫系亜人の少年が生まれた。
名は――レイヴン・クロウ。
黒髪、金色の瞳、猫耳、そして眼鏡。
よく笑う、ごく普通の少年だった。
しかし十一歳の夏、戦争によって故郷と父を失ったことで、その人生は大きく変わる。
戦争を嫌っていたはずの少年は十八歳で帝国軍へ志願。
やがて特殊作戦群へ進み、数々の戦場を経験していく。
そして世界を隔てる《門》が開いた日、人類は魔法と魔獣が存在する異世界と遭遇する。
異界戦争。
特殊作戦。
仲間との出会いと別れ。
戦場を駆け抜けるうち、レイヴンはいつしか**《黒猫》**と呼ばれるようになっていた。
だが、彼には一つだけ普通ではないものがあった。
――寿命。
猫系亜人の中でも極めて長命だったレイヴンは、仲間が歳を取り、家族を持ち、老人となってこの世を去っても、青年の姿のまま生き続けた。
かつての最新兵器は博物館へ収められ、自分が経験した戦争は歴史の教科書に載る。
それでも彼の時間だけは終わらない。
新たな仲間と出会っては見送り、敵だった者と老後に再会し、幾度もの戦争を越えながら、レイヴンは次の時代へ歩き続ける。
そして第四次異界戦争。
未来型ブルパップSG――**SG-BP12《CERBERUS》**を携えた眼鏡の青年が戦場で撮影されたことで、世界は驚愕する。
百年以上前の戦争記録に残された《黒猫》と、まったく同じ顔だったのだ。
「黒猫は、まだ生きている」
忘れられかけていた一人の兵士が、再び世界から認識される。
だが二百年近く戦場を歩いたレイヴンが最後に求めたものは、英雄としての名声でも、勲章でもなかった。
家族と食卓を囲むこと。
旅行へ行くこと。
誕生日を祝うこと。
くだらないことで笑うこと。
そして――家へ帰ること。
かつて母と交わした、
「帰ってきて」
という約束を果たすために。
少年が《黒猫》となり、
《黒猫》が伝説となり、
伝説が再び一人の人間へ戻るまで。
これは英雄譚ではない。
二百年以上を生きた一人の青年が、長すぎる戦争を終え――最後に「ただいま」と言うまでの物語。
『黒猫年代記』三部作
第一部
『RAVEN ― 黒猫が戦場に立つまで ―』
第二部
『FENRIR ― 時代に取り残された黒猫 ―』
第三部
『CERBERUS ― 二百年を生きた黒猫 ―』