あらすじ
この国には、《分岐鏡》と呼ばれるものがある。
人生で一度だけ。
自分が選ばなかった未来の、一場面を見ることができる鏡。
十八歳のリディア・フェルナーは、父の療養をきっかけに、憧れていた王立図書院への道を諦め、故郷へ帰ることを決める。
けれど、本当にそれでいいのだろうか。
迷った末、リディアは生涯に一度しか使えない《分岐鏡》を覗く。
そこに映っていたのは――
王立図書院の制服を着て、幸せそうに笑う未来の自分だった。
帰れば、家族のそばにいられる。
残れば、ずっと夢見ていた仕事ができる。
どちらも欲しい。
どちらを選んでも、何かを失う。
「正しい方を選びたい」
「後悔しない選択をしたい」
そう願えば願うほど、リディアは何も選べなくなっていく。
けれどやがて彼女は気づく。
選ばなかった未来を惜しむことと、
選んだ未来を大切にすることは、矛盾しない。
これは、正解を知ってからでなければ進めなかった少女が、未来が見えなくても、自分で選び、選び直していけるようになるまでの物語。