あらすじ
澪は、ギターなんて弾けない。
――はずだった。
けれど、ギターを握った瞬間、指が勝手に動いた。
知らないコードを知っている。
触ったこともないアンプの癖がわかる。
エフェクターを見れば、どこをどう弄ればいいのか理解できる。
そして演奏していると、ときどき思う。
「俺なら、そんな音にはしない」
私の中に、知らない誰かがいる。
その正体は、かつてギターを弾いていた姉なのか。
幼い頃に見た誰かの記憶なのか。
それとも、本当に「転生」と呼ぶべき何かなのか。
家の前に残された、持ち主のわからないギターと機材。
古い写真。
途切れた記録。
姉を知る人々。
そして、弾けば弾くほど鮮明になっていく、自分ではない誰かの感覚。
借り物の指で始まった少女の演奏は、やがて少しずつ変わっていく。
上手く弾くことではない。
誰かと同じ音を出すことでもない。
――私の音って、なんだろう。
これは「前世の天才ギタリスト」が無双する物語ではない。
自分の中にいる“知らないギタリスト”とともに、
ひとりの少女が、自分自身の音を探していく物語。