あらすじ
「セラフィーナ、貴様との婚約を破棄する。田舎の羊飼い令嬢など、王家に相応しくない!」
王都の夜会で第二王子から婚約を破棄され、聖女候補には「幻聴で錯乱している」と嘲られたセラフィーナ。けれど彼女は一切取り乱すことなく、優雅に一礼して会場を後にした。
(前世で理不尽なパワハラに耐え抜いた社畜の私が、たかが王子の癇癪で動揺すると思って?)
誰も知らない――彼女に聞こえる『牧笛の音』が本物であり、そしてそれが、この国の運命を握っていることを。
実家である辺境伯領へ戻ったセラフィーナは、荒れ果てた廃牧場を譲り受け、ずっと自分を呼び続けていた笛の音を辿って北の森へと足を踏み入れる。そこで出会ったのは、山羊の角と脚を持つ半神半獣の美青年――千年を生きた大精霊、牧神パーンの末裔だった。
「お前は……儂の音が聞こえるのだな。ずっと、ずっと待っていた」
前世で培った畜産知識と経営スキル、そして自分を信じてくれる侍女と精霊とともに、セラフィーナは辺境の地で牧場経営を始める。妄想と嘲笑された『聞こえる音』が本物だと証明するために。
必要としてくれる人がいて、守りたい居場所がある。それがこんなにも満たされることだなんて。
婚約破棄されたことは追放ではなく、円満退社。精霊が集う楽園で始まる、田舎令嬢のあたたかなスローライフ物語。