あらすじ
「生きる意味なんて、最初からなかったのかもしれない」
高校二年生の佐伯湊は、学校での孤立や周囲から向けられる悪意に疲れ果て、世界そのものを嫌っていた。
毎日が苦痛で、明日が来ることさえ怖い。
そんなある夜、湊の前に一人の少女が現れる。
黒い服。
長い髪。
そして、少女には不釣り合いなほど小さな鎌。
「私は死神です」
少女の名はミコ。
しかし、新人死神である彼女には、とんでもない失敗があった。
「助ける人を、間違えました」
死神には、死を迎える人間がいる一方で、別の誰かを救うことができるという奇妙な決まりがあるらしい。
ところがミコは、その「救う相手」を間違えてしまった。
そして一度救った人間を、死神の都合で死なせることはできない。
こうして、本来なら生きることを望んでいなかった湊は、望んでもいなかった「明日」を生きることになる。
さらに死神の存在を人間に知られてはいけないという理由から、湊はミコの仕事を手伝うことに。
そこで彼が出会うのは、さまざまな死者たちだった。
家族に伝えられなかった言葉を抱える人。
最後に食べたかったものを気にする人。
明日の予定を心配する人。
大きな夢や壮大な使命ではない。
プリンやカレー、約束、謝れなかった一言。
そんな何気ない「未練」を抱えた人々を見送るうち、湊の中で少しずつ何かが変わっていく。
一方、死神であるはずのミコもまた、死を理解しているわけではなかった。
「どうして人間は死にたくなるんですか?」
「どうして人間は、生きたいと思うんですか?」
その答えを知らない二人は、死者たちとの時間を通して、「生きる」ということについて考えていく。
生きる意味が見つからないなら、生きてはいけないのか。
生きたいと思えない日は、人生を諦めなければならないのか。
それとも、人は理由を見つけてから生きるのではなく、生きながら理由を見つけていくものなのか。
死を教えてくれた死神少女との奇妙な日常。
それは一人の少年が、特別ではない毎日の中から、自分自身の「明日」を少しずつ取り戻していく物語だった。