あらすじ
人間の脳内シナプスを視覚化し、トラウマとなった記憶の「結び目」をデジタルのメスで切り離す技術。
極秘の凄腕「記憶外科医」である灰原朔(はいばら・さく)は、感情を持たないAIアシスタントと共に、無機質なクリニックで淡々と患者の「痛み」を切り取る日々を送っていた。
「私の記憶を消してください」
密かに開かれたクリニックのドアを叩くのは、どうしても消し去りたい過去や悲しみを抱えたワケありの患者たち。
ある時は、事業に失敗しすべてを失った男。
またある時は、亡き親友への罪悪感に押し潰された女子高生。
患者の深層心理が構築する広大な「記憶の海」へダイブした朔は、記憶の窓と紐が複雑に絡み合うデータ空間で、彼らが心の奥底に隠蔽した「本当の願い」と直面することになる。
「……本当に大切なものほど、見えない箱に隠して自分でも分からなくしてしまう。人間は馬鹿な生き物だ」
過去を消すことで救おうとする冷徹で不器用な医師と、決して記憶を消させまいとお節介を焼く少女。
相反する二人が迎える患者たちは、果たしてどんな選択をするのか。
決して消せない痛みを抱えて生きる人々に贈る、切なくも温かいSFヒューマンドラマ。