あらすじ
陳汪瑶には、少し現実離れした趣味がある――まだまだ拙い日本語で、日本のライトノベルを書くことだ。
物語なら、時間をかけて書けばいい。
けれど、何度読み返してもどこかおかしい日本語は、辞書を引くだけではどうにもならない。
中国・天津。日本・東京。
海を隔てて、彼は一人の日本人の少女と知り合った。
日本語の間違いを、容赦なく指摘してくる少女――雨宮七海。
七海は中国語を練習したい。
陳汪瑶は、もう少しましな日本語を書けるようになりたい。
そうして、二人の言語交換が始まった。
最初は、敬語や助数詞、発音の話をしていただけだった。
なぜ「随便」は、いつも本当に「どっちでもいい」わけではないのか。
なぜ、あんなに初歩的な単語なのに、何度も同じところで読み間違えるのか。
そして――勉強のためだったはずなのに、どうして通話は少しずつ長くなっていくのか。
気づけば二人は、言葉とは関係のないことまで知るようになっていた。
何時に起きるのか。何が好きなのか。
機嫌が悪いとき、メッセージがどう変わるのか。
普段なら、何時ごろ連絡が来るのか。
そして、来るはずの時間を過ぎても、なかなか来ない日はどんな日なのか。
天津と東京は、ずっと遠い。
それなのに、二人の距離は少しずつ縮まっていった。
ただ――それだけで、本当にその人のことを知ったと言えるのだろうか。