あらすじ

「やっと見つけた」 その声は僕に向けて発せられたものだった。その声は聞こえていたけれど、僕は動かなかった。 強がりでも我慢でもない。 ただ、僕の世界に彼女をまだ入れたくなかった。そう思っただけだった。 「ごめん」 一日中、何もせずにただ海を眺めていた男の口から漏れたのは、謝罪だった。 ただその一言は僕の口をするりと抜け出すと、八月のシャボン玉みたいにふわふわと空に昇って、見えなくなった。 彼女は、そのシャボン玉が割れるまで見続けるほど子供じゃない。 彼女の手が、するりと僕の右脇に入り込む。 氷みたいな真っ白な彼女の手が、乱暴に僕を引っ張る。 立ち上がる。 彼女は怒っているだろうか。 それとも呆れているだろうか。 それとも慰めてくれるだろうか。 「行くよ」 彼女の心情を汲み取れるほど、僕は大人じゃなかった。

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小説を読もう2026/09/25
  • 現在の作品少女と日陰と夜の月