あらすじ
「秋に、結婚するんです。だから梅雨が明けるまでに、この家を片付けたくて」
六月、雨の降る山あいの町。
実家の工務店で働く朝倉遼(25)は、古民家の修繕の見積もりに訪れた先で、縁側に座る濡れ髪の女性と出会う。
宮下灯(23)。春に亡くなった祖母の家を売るため、ひと夏だけ町に帰ってきた彼女は、秋に嫁ぐことが決まっていた。
工期は、梅雨明けまで。
雨の日は、外の工事ができない。
だから雨の日だけ、遼は理由をつけて彼女の家へ通い、提灯の吊るされた座敷で、並んで湯呑みを傾けるようになる。
荒れた庭の片隅には、祖母が最後に植えた深紅のダリア。
その花言葉は「華麗」、そして――「裏切り」。
子どもの頃、二人で秘密を叫んだ古井戸。
母に捨てられた夏に、彼女が立てた誓い。
夢から逃げ帰った遼が、ずっと見ないふりをしてきた本心。
雨が降るたびに近づいて、雨が降るたびに、終わりが近づく。
彼女は、嫁いでいく人だ。
好きだと言えば、彼女の誓いを壊してしまう。
「今年は、たくさん降るといいな」
梅雨が明けたら、この恋は終わる。
それを最初から知っていた二人の、ひと夏だけの物語。
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※全10話・完結済み。
※男性視点の、切ない現代恋愛です。ハッピーエンドではありませんが、余韻の残る結末を目指しました。
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