あらすじ
婚約者だったアルベルト子爵から、愛人ヴィオレッタを選んだという理由で婚約を破棄されたセシリア。傷ついた彼女に両親が示したのは、魔物が跋扈する辺境を守るグレゴール辺境伯との契約結婚だった。冷酷、女嫌い、魔物より恐ろしい――そんな噂を聞いていたセシリアは、三年間だけの夫婦生活を耐える覚悟で辺境へ向かう。ところが、実際のグレゴールは噂とは違い、領民を大切にし、危険が迫れば自ら剣を取って人々を守る、とても不器用で優しい男だった。共に過ごすうち、二人の距離は縮まっていく。やがてセシリアは、夫の隣に立つだけではなく、辺境領のためにできることがあると気づく。村々の収穫や市場の流通を調べ、領民の暮らしを良くする方法を考え始めた矢先、倉庫から小麦が消える事件が起きる。帳簿は書き換えられ、現場には謎の黒い糸が残されていた。さらに森では、現れない強力な魔物が群れを成して襲撃。グレゴールは、誰かが魔物を呼び寄せている可能性を疑う。そんな中、王家による辺境領の統治確認が前倒しされ、監察官として現れたのは、かつてセシリアを捨てたアルベルトだった。彼は辺境から王都へ戻るようセシリアに迫り、自分のもとへ戻ってほしいと告げる。しかしセシリアの心は、すでにグレゴールへ向かっていた。北門で魔獣襲撃が起こり、グレゴールが戦場へ向かうと、セシリアは彼の無事を願い、帰還した彼の胸へ飛び込む。その後、森で捕らえられた黒衣の男から、レイゼン家の紋章が入ったペンダントが見つかる。黒い糸、魔石、消えた食料、魔獣襲撃――すべては偶然ではなかった。男は、グレゴールを直接倒すのではなく、魔獣を増やし、食料を奪い、兵士を疲弊させ、領民の不安を煽って辺境領を壊す計画を語る。王家の統治審査を利用し、グレゴールの信用を失わせる陰謀。その背後にいるのは誰なのか。契約から始まった二人の結婚は、やがて辺境領の未来を懸けた戦いへと巻き込まれていく。