あらすじ
言うなれば、男は根っからの探究者だった。
『未知』に手を伸ばし続けた。
男は人並みの幸せを求めることなく、深い泥に身を沈め、その泥を自ら欲した。
それを愚者と言わずして、なんと言うのか。
しかし、それでも男は探究者だった。
『知恵』と『経験』を欲した。
『毒』と『愚』を呑んだ。
『既知』と『知識』を手繰り寄せた。
貪欲に、この世全てを喰らった。
彼は『未知』を喰らい尽くした。
大地を海を空を人を動物を過去を現在を未来を……彼は識った。識ってしまった。
そして、『未知』を喰らい尽くした彼は気づいた、人の限界に。
時の針が進む毎に思い通りにならなくなっていく己を呪った。
だから彼は『星』を喰らった。
永遠の命を奪わんが為に。
永劫の“今“を続けんが為に。
そして男は繰り返す。
“今“が朽ち果てようと、また次の“今“が始まる。それを彼は繰り返す。何度も時計の針をその手で始まりへと戻す。同じ"今"を繰り返して。
その意義を、忘れてしまっても。
彼は、本物の愚者となった。
探究者は死んだ。
男は、『永劫』を求め続け、深い泥に身を沈め、その泥を貪欲に溜め込んだ。
それを愚者と言わずして、なんと言うのか。
こうして『愚者』は誕生した。