あらすじ
仮想空間で故人と再会できるというサービスが始まったと、母親から聞かされたとき、おれは真っ先に何かの詐欺ではないかと疑った。なんでも、生前に脳をスキャンしたり、本人がさまざまな質問に答えたりして集めた膨大なデータをもとに、故人の人格や記憶だけでなく、話し方や仕草まで精巧に再現できるのだという。
危ない話に違いないと強く注意しただけで、それ以上詳しくは聞かなかったが、まさか自分がその仮想空間とやらに足を踏み入れる日が来るとは夢にも思わなかった。
案内された部屋の長椅子に横たわると、こめかみに小型のチップを貼りつけられた。脳に特殊な電磁波を照射して、意識だけを仮想空間へ接続する仕組みらしい。職員から説明を受けても詳しい原理は理解できなかったが、少なくとも詐欺ではないようだ。
職員の指示に従って目を閉じると、ふっと意識が遠のいた。そして次の瞬間、おれは何もない真っ白な空間に立っていた。
床も天井も見当たらず、足元には自分の影すらなく、どこまでも白い世界が続いていた。
『間もなく、お父様がお見えになります』