あらすじ
親を亡くし薬草売りとして生きてきた蘭燕(らんえん)は、ひょんなことから後宮の毒見役として召し上げられる。三年前、恩人である行商人を毒殺の疑いで陥れられた過去のせいで、「毒を操る悪女」という不名誉な噂が付きまとう。けれど彼女に人を害する気などさらさらなく、ただ生きるために毒と薬の知識を磨いてきただけだった。
ある夜、後宮の片隅で言葉を発しない女官・玲(れい)と出会う。彼女は誰の前でも声を発さないが、実は宮廷随一と噂される天文台付きの魔術師だった。二人は筆談だけで意思を通わせ始める。折しも後宮では、身分の低い妃たちが次々と原因不明の高熱で命を落とす怪事が起きていた。毒か、呪いか、それとも――。
舌と知識で毒を見抜く乙女と、沈黙の中に絶大な力を秘めた魔女。噂に振り回されながらも、二人は誰も気づかなかった真実に近づいていく。