あらすじ
幕末。
戦乱の世を、一人の侍が生きていた。
名は、榊原朔。
新政府側の兵として戦場に立ち、これまで幾人もの人間を斬ってきた。
人を斬ることに慣れたわけではない。
ただ、生き残るために刀を振るってきた。
そんな朔が、ある日、町医者の娘・千代と出会う。
「あなた、馬鹿ですね」
初対面でそう言われた朔は、なぜかその女のことが気になって仕方がない。
戦場では恐れられる男。
けれど、千代の前ではどうにも不器用。
やがて二人は互いに惹かれ合い、朔にとって初めて「帰りたい」と思える場所ができていく。
しかし、時代は二人を待ってはくれなかった。
戦場へ向かった朔は、何度も死の淵をさまよう。
そしてある戦いで消息を絶つ。
千代のもとに届いたのは――
「榊原朔は戦死した」
という知らせだった。
それから数年。
時代は幕末から明治へと変わっていた。
千代には、彼女を支えてくれる新しい男がいた。
優しく、誠実で、もう二度と大切な人を失いたくない千代にとって、安心できる存在。
千代は朔を忘れようとする。
そして、別の人生を歩き始めようとした。
その頃。
死んだはずの男が、再び町へ帰ってくる。
生きていた。
しかし、朔が帰ってきたとき、千代にはもう婚約者がいた。
失った恋。
取り戻した命。
そして、二人の間に立ちはだかる新しい人生。
人を斬ることでしか生きられなかった侍は、最後に何を選ぶのか。
これは、幕末の動乱を生き抜いた一人の侍と、一人の女性が、もう一度人生を重ねていく物語。