あらすじ

『スクリプト・オブ・インノセンス』 「主権国家の法律が人道を殺すとき、システムエンジニア(SE)はどのコードに従うべきか?」 イスラニア国防軍の気鋭のユダヤ人SE、ハリー・エリオット(29)は、自ら開発したAI自動標的選定システムが、隣接する封鎖自治区カナアンの学校跡地で子どもたちをテロリストと誤認し、爆殺する凄惨な現実を目撃する。いたたまれない罪悪感に襲われたハリーが深層アルゴリズムを解析すると、そこにはベネット首相の意図的な民間人大量虐殺を可能にする「虐殺のバックドアコード」が仕込まれていた。 かつてジュニアハイスクール時代に読んだ思想家ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ(思考停止の恐怖)」を自らの職場で痛感したハリーは、システムエンジニアとしての魂を懸けたデバッグを決意。 標的リストから無辜の市民やかつてのコード仲間アリアを救う例外処理コードを仕込み、国家のジェノサイドの決定打となるシステムログを国際機関へ転送(内部告発)した。 軍事機密漏洩による「国家反逆罪(最高刑・死刑)」の容疑で逮捕されたハリーに対し、人権派弁護士サミュエルは「推定無罪」の原則を盾に一時保釈を勝ち取る。ハリーのリークにより、国際刑事裁判所(ICC)は現職のベネット首相への逮捕状(拘束対象指定)を発行。 追いつめられた首相は、公判でハリーを合法的に処刑し、政権を延命させようと包備網を狭める。 サミュエルはハリーに「自らの国籍、財産、キャリア、法の保護というすべての権利の完全な放棄(社会的死)」を意味する『政治亡命』を促し、テルアビブの駐イスラニア・フランス大使館への電撃逃亡を命じた。 治安機関の銃弾と監視の目を潜り抜け、主権の境界線(白いライン)を越えてフランスへと亡命したハリー。しかし、パリへ向かう機内の彼の手元には、高スペックPCも財産もなく、就労も禁じられた薄汚れた難民申請書と、安物のノート、ボールペンが1本あるだけだった。 権利を全て失い、アーレントと同じ「持たざる難民」へと転落したハリー。しかし、ベネット首相を縛る数理モデルは彼の頭脳にすべて記憶されている。デジタルな武器を奪われた天才SEと、国際指名手配犯となった最高権力者の、国家と国際法を揺るがす「紙とペン」の戦いがはじまる。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/09/25
  • 現在の作品『裸のこころ』— Le Prince du Script Innocent —