あらすじ
景司は、何事にも厳格で、会社の規則を一切曲げない男だった。数字の間違いも、手続きの不備も見逃さず、上司の頼みであっても規則に反することなら拒んだ。そのため、周囲からは「悪魔のような男」「融通の利かない男」と陰で呼ばれ、次第に職場で孤立していく。
しかし、景司が守っていたのは規則そのものではなかった。立場の弱い人間が、強い者の都合で不利益を受けないための公平さだった。
景司は古い書類の中から、十年前に未払いとなった社員の手当を発見する。さらに、自分の印鑑が不正に使われた疑いまで持たれ、自宅待機を命じられる。そんな景司を支えたのが労働組合だった。
会社は景司を孤立させ、仕事を減らし、退職へ追い込もうとする。しかし景司は辞めなかった。与えられた仕事を黙々と続け、古い記録を正しく整理していく。やがて若い社員たちも、景司が誰かを責めるためではなく、誰に対しても公平であろうとしていたことに気づく。
最後に景司は知る。人は一人で生きているのではない。自分が守られていたように、自分もまた誰かを守っていたのだと。