あらすじ
私こと花房 隆志は退職代行『bye』のスタッフだ。たった独りで夜勤担当をしている。
一晩中PCのモニターに張り付き、退職希望者の通知が来るのを待つだけの単調な仕事……。
寄せられるのは、新卒者たちや20代の若者、心を病んだ人たちの切実な「バックれたい」という悲鳴ばかり。
深夜、代行を希望する1件の通知が届く。
『bye』の常連、七種(さえぐさ)からだった。25歳の気弱な青年で、かれこれ3年前からの付き合いだ。季節が変わるごとに退職代行を依頼されるので、彼をよく知っていた。
ところが今夜の七種の様子はおかしい。
「僕の居場所はないんです。疲れた。いっそのこと人間社会だけじゃなく、この世からもバックれたい」
もしや自死を考えているのではないか?
私は退職代行の職務を外れ、必死に彼を説得しようとLINEの返信を重ねるのだった……。
彼の言葉に、私自身の孤独な境遇を重ね、奇妙なシンパシーを憶えていく。
そして、システム画面の奥深くに隠された、決して押してはならない『禁断のチェックボックス』を見つけ、クリックしてしまう……。
現代のリアルな病理、退職代行の裏側を描きつつ、現実が音を立てて崩れ去る。
そしてバックれた先に、『ダンマス』のような現実よりも過酷な世界が待っているとしたら……?
……ダ、ダンマス? 壇蜜じゃなしに?
※全10部、約19,800文字です。
※本作は武 頼庵さま主催『木枯らしの風景企画』参加作品です。