あらすじ
俺は、人と話すのが苦手だ。
友達は少ない。喧嘩なんてしたこともない。誰かを救えるほど強くもない。
そんな俺――望田奈雄は、ある夜の新宿で、一人の少女と出会った。
物部咲優。
派手な格好で夜の街をうろつき、酒も煙草もやる。危ない大人たちとの付き合い方も、俺なんかよりずっと知っている。
「ねえ、お兄さん!」
馴れ馴れしくそう呼んでくる彼女と関わったことをきっかけに、俺の日常は少しずつおかしくなっていった。
夜の歌舞伎町を歩いたり、コンビニの前で飯を食ったり、くだらない話をしたり。
時には、誰かの厄介事に巻き込まれたり。
別に正義の味方になりたかったわけじゃない。
ただ、目の前で誰かが苦しんでいるのを見て見ぬふりするのが、どうしても嫌だった。
だから俺は――仮面を被った。
赤い複眼。
黒い装甲。
そして、出所すらよく分からない奇妙な装備。
見た目だけなら、どう見ても日曜の朝に登場するヒーローだった。
なお、中身は俺である。
当然、強くなったりはしない。
殴られれば痛い。怖いものは怖いし、喧嘩だって弱い。
それでも、一度交わした約束だけは破りたくなかった。
そんな俺の小さなお節介は、やがて歌舞伎町の裏側へ、そして――本来なら俺なんかが知るはずのなかった「何か」へと繋がっていく。
夜の街には、俺が思っていたよりずっと多くのものが潜んでいた。
人も。
人じゃないものも。
これは、何者でもなかったクソ雑魚陰キャの俺が、少女と夜を共に歩きながら、いつの間にか本物の怪物たちを相手にする羽目になるまでの話だ。
――まあ、できれば、普通に帰りたいんだけど。