あらすじ
海の近くにある、小さなサーフショップ『カーム』。
そこで働く菊水水輝《きくすいみずき》、二十二歳。
昔から海とサーフィンが好きで、朝になれば波を見て、店を開け、時間があれば海に入る。
そんな毎日を、俺は結構気に入っていた。
ある日、店に一人の女性がやってくる。
南雲旭《なぐもあさひ》、二十三歳。
都会での生活をやめ、海のある暮らしを求めて東京から和歌山へ引っ越してきた彼女は、サーフィン未経験。
初めて乗ったボードでは転び。
波には何度も置いていかれ。
やっと立てたと思えば、数秒で海へ落ちる。
それでも旭は、毎回笑いながら言う。
「もう一回」
そんな旭にサーフィンを教えているうちに、いつしか彼女は『カーム』にも自然と馴染んでいった。
自由すぎるオーナーに、比較的まともな店長。
距離感のおかしい大学生バイト。
コーヒーの匂い。
店の床に落ちた砂。
干されたウェットスーツ。
海から戻ってきた客の笑い声。
仕事終わりのサーフィン。
たまにはみんなで飯を食べて、酒を飲む。
そして、毎日少しずつ違う表情を見せる海。
夏の賑やかな海も。
人の減った秋の海も。
寒い冬の海も。
暖かさが戻ってくる春の海も。
同じ場所で過ごしていても、同じ一日は一度もない。
昨日までいつも通りだったはずの水輝の日常に、少しずつ旭がいる時間が増えていく。
海が好きで、サーフィンが好き。
ただそれだけだった毎日に、
いつの間にか大切な人たちが増えていく。
これは、地元で海と共に生きてきたサーファーと、
都会を離れて海辺へやってきた一人の女性。
そして、小さなサーフショップに集まる人たちが過ごす――
海とサーフィンの、何気ない日常物語。