あらすじ
作品梗概
本作品は、主人公の真理が、中学時代に密かに思いを寄せていた雄一との、十年超しの恋を描いた恋愛小説である。
仕事に面白みを見出せず、失敗してばかりの日々。そんなある雨の日、真理は一匹の猫と出会う。背中に円い模様のある白猫、その子につけた名前はまる。まるという心の支えを得て、真理はなんとか日々の生活を送っていた。
そんなまるのことを、中学時代からの友人の美里と話していたとき、真理の脳裏に中学三年生のときの光景が浮かぶ。それは、学校帰りの公園で、仔猫を見つけたときのこと。家で飼ってあげることができなかった真理は、仔猫のことが心配で、毎日餌を運んだ。その仔猫が、ある雨の日にいなくなった。一枚の、汚れた服を残して……。
クリスマスの足音が聞こえ出したある日、今度はまるが突然帰ってこなくなった。不安になった真理は、とっさに思いついて迷い猫のポスターを作る。そして、それを電柱に貼った。まるが、ひょっこりと帰ってくることを信じて。
そうして迎えたクリスマスイブ、真理はまるが戻ってくることを願って、とびきりの料理を作って待っていた。そして、鳴り響いた玄関のチャイムの音。ドアの外に立っていたのは、まるを抱いた男性で、まるの元の飼い主だった。
真理は、雄一と名乗る男性を部屋の中へと入れる。優しそうな表情の雄一とともに、和やかな時間を共にしたのだったが、その雄一が語ったことは、真理にとって衝撃的なことだった。
真理が中学生のときに出会った仔猫を引き取ったのは、雄一だった。つまり、まるがそのときの仔猫だったのだ。雄一は、自分が仔猫を引き取ったことを、真理に知らせるために、部活で着ていたユニフォームを残す。そのときは気づかなかったが、実はそのユニフォーム、真理にとっては眩い恋の思い出の品だった。
真理の初恋、だけどそれは叶わぬ恋ではなかった。なぜなら、雄一も密かに真理のことを思っていたのだから。それを知った真理は、まるが見守る中、雄一の腕の中に飛び込む。十年越しの恋が実った瞬間だった。
年が明けて、まるはいつしか、真理の部屋と雄一の部屋とを行き来するようになっていた。悩んでいた仕事にも、何とか方向性を見い出しつつあった真理。友人の美里と電話で話す真理の傍らには、まるが雄一から託されたラブレターを首輪につけて、うっとりと目を細めていた。
(原稿用紙換算100枚)