あらすじ
五歳の冬、公園で震えていた榊義郎に、一人の男が手を差し伸べた。
男の名は安倍明。怪異や超常現象に対処する、内閣府特異事象対策庁の長官だった。
義郎の世話を任されたのは、炎を操る元小学校教諭・安川秀明。
口うるさくて、筋トレとラーメンが大好きなこの男は、夜中に呼べば眠そうな顔で来てくれる。
符術を教えてくれる安倍を「オヤジ」。
暮らしを共にする安川を「おやっさん」。
二人に見守られながら、義郎は少しずつ、自分の居場所を見つけていく。
だが、能力の強さがものをいう学校では、火も出せず、物も浮かせられない義郎を軽んじる声があった。
「長官に拾われただけ」――自分への陰口なら、黙って通り過ぎることもできた。
それが、育ててくれた人へ向けられるまでは。
「なんも知らんくせに、おやっさんを悪う言うな」
転び方から始まった武術の稽古。何度も書き直した護りの札。
二人から受け取った教えを胸に、少年は、自分の力をどう使うかを選んでいく。
『破滅の扉』の榊義郎、その少年時代を描く、家族と成長の現代ファンタジー。