あらすじ
半年後、このラジオ局はなくなる。
経営悪化と設備更新費の問題から、閉局がほぼ決まった小さな地方FM局。
最後まで残されることになったのは、金曜深夜0時から2時までの生放送だった。
集められたのは、音響、プロデューサー、パーソナリティ、ディレクター、構成作家、リポーター、編集・配信担当――仕事も性格も違う七人。
局から求められたのは、
「余計なことはせず、事故なく最後まで」
それだけだった。
けれど、深夜の番組には少し変わった声が届き始める。
午前1時37分に、閉店した喫茶店の名前を一度だけ読んでほしい。
父の誕生日に曲を流してほしい。
でも、本当の理由は放送しないでほしい。
返事も解決もいらない。
ただ、誰かに知っていてほしい――。
七人は、声を集め、事情を知り、言葉を整え、音を送り出していく。
やがて気づく。
知ることと、伝えることは違う。
話してくれたことと、使っていいことも違う。
公開されていることと、もう一度広めていいことも違う。
そして、届くことがいつも幸せとは限らない。
番組が注目されるほど、
「いい話」は数字になり、
人の人生はコンテンツになっていく。
閉局まで、あと半年。
七人が最後まで考え続けるのは、
何を放送するか――そして、何を放送しないか。
終わることが決まったラジオ局で、
七人と、夜の向こうにいる誰かをむすぶ物語。