あらすじ
「お前には聖女の力などない。ただの畑女だ」
収穫祭の最中、王太子ルカスから婚約破棄を突きつけられた豊穣の聖女セレスティア。派手な花を咲かせる男爵令嬢ミレーユこそが「真の聖女」だと持て囃され、地味な【豊穣】のギフトを嘲笑われる。
しかし――彼女の前世は、日本で品種改良と土壌科学に人生を捧げた農学研究員だった。
花は花、作物は作物。この二つを混同する者に、国の食は預けられない。
十年間、毎朝欠かさず王国全土の穀倉地帯に注いできた【豊穣】。それを奪われて初めて、人はその価値を知る。
「では――実りは、すべて持って帰らせていただきますわ」
完璧な一礼と微笑みを残し、セレスティアは自ら品種改良した『歌う麦』の種子と農法の手記を携え、王国を去る。向かう先は、不毛の地と呼ばれた北の廃領地『風吹き荒野』。
前世の知識と地味なギフトを武器に、彼女の廃領地スローライフが始まる。緑肥、輪作、風車による揚水と脱穀――科学と魔法が融合し、痩せた大地は少しずつ黄金の海へと変わっていく。
心優しい村人ハンナ、不器用な竜人ガーヴィス。仲間たちと共に築く豊かな暮らし。
その一方で、彼女を追放した王国からは、静かに食料が消えていく――。
追放された聖女が贈る、痛快・農業無双スローライフ!
「風は、わたくしが向かわせたい方へ吹くものですから」