あらすじ
「セレスティア、貴様の“土いじり”はもう見飽きた」
収穫祭前夜、王太子アルフォンスから突如婚約破棄を告げられた公爵令嬢セレスティア。次期王妃が畑に膝をつくなど恥さらしだ――そう嘲る貴族たちの前で、彼女は取り乱すことも、すがることもなく、ただ淡々と一礼しました。
(祈りで麦が実るなら、この五年間の私の苦労はいったい何だったのでしょうね)
前世は日本の農業試験場の研究員。痩せた土壌に堆肥を仕込み、寒さに強い麦を五年かけて選抜し、輪作の暦を村々に配って歩いたのは、すべてこの私。この国の豊穣は“聖女の祈り”ではなく、私の血のにじむ品種改良の成果ですのに。
ならば――いただくものをいただいて、去るといたしましょうか。
種苗も、施肥の記録も、土壌診断の帳面も、すべては私の私財。「土くれの記録などいらん」と言い放つ殿下に微笑み、セレスティアは自らの成果をすべて手に、王国を後にします。
向かう先は隣国リーゼンガルト。『冷酷な竜将軍』と恐れられながら、飢える辺境の民のために、彼女が匿名で発表した論文を三年間写し続けていた、不器用な竜人の辺境伯ヴォルフのもとへ――。
「祈りでは、腹は膨れん」
豊穣は、土と、汗と、来年への種から生まれる。ざまぁする気などありません。ただ、認めてくれる人々のもとで、私は今日も土に膝をつくのです。
追放令嬢が贈る、あたたかな農業無双スローライフ、開幕。