あらすじ
最後に見たのは、泣きながら自分の手を握る十一歳の娘だった。
三十七歳の銀行員、織原祐司。
三年前に妻を亡くし、一人娘の陽奈と二人で暮らしていた彼は、駅前で起きた無差別殺傷事件に巻き込まれ、命を落とす。
まだ死にたくない。
この子を一人にしたくない。
その願いも届かぬまま意識を失った祐司が、次に目を覚ましたのは魔法の存在する異世界だった。
六歳の少年、レオ・クローロとして。
祐司として生きた三十七年と、レオとして生きた六年。
二つの人生の記憶を持つレオの胸に残り続けるのは、元の世界に残してきた娘の存在だった。
もう一度、陽奈に会いたい。
その願いを胸に、レオは陽奈へ辿り着く方法を探しながら、新たな家族や仲間と共にこの世界を生きていく。
しかし、魔法のあるこの世界にも、人の悪意や歪んだ想い、争いによって命が失われる現実が存在していた。
出会い、失い、それでも誰かと生きていく。
そのたびに、レオにとってこの世界は「知らない世界」ではなくなっていく。
二つの人生と、一つの願い。
これは、今ここにいる人々と生きながら、
今ここにいない大切な人を追い続ける少年の物語。
――異世界ダークファンタジー。