あらすじ
二千年の歴史を誇る「カナン帝国」の滅亡から十三年。
帝国の遺児として密かに生を受けた少女・エセルは、外界から隔絶された秘境ガラーシャ村で、身分を隠しながら穏やかな少女時代を過ごしていた。
幼馴染の少年・エフェスをはじめとする温かな村人たちと育む平和な日常。だが、異端を刈り取る『アルケテロス教』の追手が迫りつつあることを悟ったエセルは、愛する村を悲劇から守るため、母イマ王妃や忠実な護衛たちとともに静かに村を去る決意をする。
旅立ちの夜、月光が揺れる湖畔でエフェスと交わした、自らの角から作られた「虹龍石の首飾り」と、切なくも固い再会の約束――。
故郷を後にしたエセルを待ち受けていたのは、魔物が巣食う原生林や極寒の砂丘、そして宗教迫害や奴隷制、裏社会の権力闘争が渦巻く港町フィリピの残酷な現実だった。
亡国の王女という重い宿命と幾多の試練に晒されながらも、守られるだけだった少女は、大切な約束を胸に気高く力強い一歩を踏み出していく。