あらすじ
朝。とあるマンションの一室。目を覚ました老人は小さく呻き声を漏らしながら、ベッドの中でもぞもぞと寝返りを打った。
夜中に目を覚まさなかったはずなのに身体には重さが残っている。関節の節々が軋み、布団の中に溜まったぬるい空気が妙にまとわりついていた。
もっとも、それもいつものことだ。老人はもう一度目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。そのかすかなため息が薄暗い部屋の空気に溶け込んでからしばらく経ったあと、ようやく重いまぶたをこすりながら上体を起こした。
老人はぼやけた頭のままベッドから抜け出て、のそのそと窓際へ歩み寄り、カーテンを開けた。
朝の陽射しが一気に流れ込み、柔らかな光が室内を満たした。埃の粒子が光の帯に浮かび上がり、静かに漂っている。老人は眩しさに目を細めながらも、ゆっくりと口角を上げた。