あらすじ
※本作は、移住・田舎暮らしをテーマにした連作ホラーの第一話で、TALESで公開中の作品です。
古民家カフェの夢を叶えた夫婦が移住した先は、無料の医療と温かい人情が自慢の、過疎の村だった。「お互い様」を合言葉に助け合う美しい共同体――その裏側で、静かに進行していたものとは。
【イントロダクション】
脱サラして古民家カフェを開いた藤野慎・亮子夫婦。移住先の村は、医療費無料、助け合いの精神にあふれた理想郷に見えた。しかし移住から年月が経つにつれ、村人たちの体に刻まれた無数の手術痕、不自然に多い転出、そして「お互い様」という言葉の本当の意味に、夫婦は少しずつ気づいていく。
【主要登場人物】
藤野慎(本作の主人公)
脱サラして古民家カフェ『かふぇ とらじゃ』を開業。割増退職金を含む二千万円を投じ、この村での暮らしに理想を見出す。違和感を覚えても、村での居場所を失いたくない一心で目を逸らし続ける。
亮子
慎の妻。パン職人としてカフェを支える。実家の祖母の医療費で苦労した経験から、無料医療という制度に強く惹かれて移住を決意。慎よりも早く違和感に気づく敏感さを持つ一方、最終的には誰よりも早く"受け入れる"側に回る。
林
村役場・移住課の職員。自身も四年目の移住者。夫婦にとって最初の窓口であり、頼れる相談相手。だが、その笑顔の裏には――。
横田良平
夫婦より先に移住してきた先輩住民。カフェの常連。自身の手術痕を誇らしげに語り、村の医療を絶賛する。
田中
夫婦に度々野菜を届けてくれる、気のいい村人。ある日、病院で意外な姿を見せる。
【あらすじ】
※このあらすじには物語の重要な展開に触れる記述が含まれます。未読の方はご注意ください。
移住審査での健康診断、同意書への署名――すべては「制度を守るため」という納得のいく説明とともに進んでいく。無料の医療、助け合う村人たち。都会の乾いた人間関係に疲れた夫婦にとって、それは理想郷そのものだった。だが、村人たちの体に残る手術痕の多さ、頻繁な住民の入れ替わりに、亮子が先に違和感を覚え始める。そして四年目、隣に越してきた若い夫婦が「逃げよう」とした夜、村は牙を剥く。