あらすじ
「重いの、大丈夫ですよ」
そう言って、彼女の荷物を持った。
それだけのことだった。
――この世界では、それを求愛と呼ぶ。
灰島誠、十五歳。
適性、等外。順位、七千万位。背負った借金、三百二十万。
女が強く、男は弱い世界である。
男は守られ、甘やかされ、その代わりに、自分では何ひとつ選べない。
けれど誠は、それを不幸だと思っていない。
前世の十年を病室で過ごした彼には、走れることも、坂を上れることも、
重い荷物を持てることも、全部が嬉しい。
だから、助けてもらえば頭を下げる。
教わったことは、言われた五倍を十倍やる。
困っている人がいれば、黙って重いほうを持つ。
本人にとっては、ただの礼儀で、ただのお礼だ。
この世界の女たちにとっては、そうではない。
名乗って頭を下げるのは、決闘の申し込みの作法。
重いほうを持つのは、守る側の、女の役目。
毎晩、その日の回数を書いた紙を戸の前に置くのは、続けますという誓いの形。
序列一位の管理人。世話焼きの先輩。笑うのをやめられない同い年。
正しさを降ろせない元リーダー。皮肉屋の七段。
守るつもりで拾った少年に、ひとりずつ、脈を乱されていく。
「……あんた、それ、誰にでも言うの」
答えは、誰にでも言う。だから、嘘じゃない。
最後まで気づいていないのは、本人だけ。
王道バトル×勘違い恋愛×群像コメディ。勘違い育成ラブコメ、開幕。