あらすじ
痛みも、屈辱も、我慢もない。
人類はついに、苦痛のない世界を手に入れた。
苦痛は不幸を生む。
ならば、苦痛を取り除けば人間は幸福になる。
その思想のもと、社会から不要な苦痛は次々と排除され、やがて人類は「マゾヒズム」という非合理な欲望さえ手放した。
幸福指数99.8。
誰も傷つかず、誰も苦しまない。
そこは、ほとんど完璧な世界だった。
そんな社会で、存在するはずのない異常な精神波形が発見される。
調査の先にいたのは、エマという一人の女性。
辛いものを食べ、重い鉄を持ち上げ、わざわざ苦労して小説を書く。
彼女は、人類がとうに忘れたはずの感覚を残していた。
── 苦痛ごと、楽しむ。
誰も傷つかない世界は、本当に天国なのか。
マゾヒズムが消えた世界を描く、ディストピアSF。